※アイキャッチはAI生成による写真調のイメージです。本文の漫画も架空の人物・会話例で、実際の事件関係者ではありません。
※本記事は、テレビ各局(日本テレビ系・テレビ朝日系・フジテレビ系)や日本経済新聞などの報道と、警察庁の公表資料をもとに作成しています。逮捕・起訴の段階にある事件は、裁判で有罪が確定するまでは無罪と推定されます。容疑者の実名は掲載していません。
「お母さんが今度、入院して手術することになった」
マッチングアプリで知り合い、何度か会っている女性から、こんな話を打ち明けられたら——あなたは、どうしますか。
「力になってあげたい」と思うのは、自然なことです。誠実な人ほど、そう思うでしょう。でも、その優しさにつけ込む詐欺があります。2026年9月には、まさにこの手口で、60代の男性から計1350万円をだまし取ったとして、36歳の女が逮捕されました。捜査員の間でついた呼び名は「いただきヨシコ」です。
この記事では、この事件と、2023年に世間を騒がせた「頂き女子りりちゃん」事件などを振り返りながら、40代・50代の男性が狙われる”頂き女子”型の手口と、見抜き方・断り方をまとめました。
先に結論
- “頂き女子”型の詐欺は、「貸して」ではなく「助けて」と言ってきます。家族の病気・手術・借金など、断りにくい話が入口です
- 実際に会っていても、本物とは限りません。会って信頼させてからお金の話をするのが、この手口の特徴です
- ロマンス詐欺の被害者の約6割は男性。男性の被害は50代が最多で、40代も少なくありません(警察庁)
- 守るルールは1つ。知り合って間もない相手には、理由が何であれお金を出さない。迷ったら、一人で決めずに相談を
お金の話が出たら
あなたの優しさを守る、3つの行動
- 1 送金を止める急いで返事をせず、いったん立ち止まる。
- 2 記録を残すメッセージや振込の情報を保存する。
- 3 一人で決めず、相談する信頼できる人や相談窓口に話す。
- 1送金を止める
- 2記録を残す
- 3一人で決めず相談
12秒の図解アニメーション。上のチェックで動きを止められます。3つの行動を、動きを止めて表示しています。
2026年9月「いただきヨシコ」逮捕——何があったのか
報道によると、事件のあらましは次のとおりです。
事件のあらまし(報道より)
- 2026年9月30日、警視庁が36歳の女を詐欺の疑いで逮捕
- 女は2025年2月、マッチングアプリで60代の男性と知り合い、都内で会うなどしていた
- 2025年4月〜6月、「お母さんが今度、入院して手術することになった」「父がガンになり手術する必要がある」などとウソを言い、治療費の名目で複数回、計1350万円を振り込ませた疑い(報道により「約1300万円」とも)
- 実際には、家族は入院していなかったとされます
- 調べに対し、「ホストクラブで使うためにだました」と容疑を認めているということです
- 「300万円以上もらった人は4人、300万円以下は2桁いる」という趣旨の供述もしており、警視庁が余罪を調べています
「いただきヨシコ」は、女が自分で名乗っていた名前ではありません。男性からお金を「いただく」手口から、捜査員の間で呼ばれていた呼び名だと報じられています(報道によって表記は異なります)。
この事件で注目したいのは、2人が実際に会っていたことです。「実際に会って、顔も知っているのだから本物だろう」——そう思うのは自然なことです。会っているという安心感が、病気の話を疑いにくくさせてしまいます。
過去にもあった”頂き女子”事件を振り返る
「いただきヨシコ」という呼び名は、2023年に大きく報道された「頂き女子りりちゃん」事件を思い起こさせます。ここで、同じ系統の事件を時系列で振り返ってみましょう。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2023年5月 | 男性をだます「マニュアル」を買った当時20歳の女が、男性2人から計約1000万円をだまし取ったとして逮捕。のちに執行猶予つきの有罪判決 |
| 2023年8月 | マニュアルを作って売っていた「頂き女子りりちゃん」こと当時25歳の女が逮捕される |
| 2024年4月 | 名古屋地裁が懲役9年・罰金800万円の判決 |
| 2024年9月 | 名古屋高裁が懲役8年6月・罰金800万円に減刑 |
| 2025年1月 | 最高裁が上告を退け、懲役8年6月・罰金800万円が確定 |
| 2025年6月 | 改正風営法が施行。ホストクラブなどの「色恋営業」や、売掛金の悪質な取り立てが規制される |
| 2026年9月 | マッチングアプリで知り合った60代男性から計1350万円をだまし取った疑いで「いただきヨシコ」が逮捕 |
出典:日本経済新聞、テレビ各局の報道、Wikipedia「頂き女子りりちゃん事件」をもとに当サイト作成。
2023年「頂き女子りりちゃん」事件——被害は約1億5500万円
報道によると、「頂き女子りりちゃん」を名乗っていた女は、50代の男性3人の好意につけ込み、「借金を返さないといけない」「家賃を滞納して住む所がなくなる」といったウソで、計約1億5500万円をだまし取りました。だまし取ったお金は、ホストクラブに使われていたとされます。
この事件がとりわけ注目されたのは、女が男性をだます手順を「マニュアル」にして、ネットで売っていたことです。マニュアルには、狙う中高年の男性を「おぢ」と呼び、恋愛感情を抱かせてお金を引き出すまでの流れや、LINEの文例までがまとめられていたと報じられています。購入者は約1000人ともいわれます。
裁判では、2025年1月に懲役8年6月・罰金800万円の実刑が確定しました。
マニュアルを買った20歳の女も逮捕——手口は”コピー”されて広がる
実は、りりちゃん事件の発端になったのは、マニュアルを買った側の事件でした。2023年5月、マニュアルを購入した当時20歳の女が、男性2人から計約1000万円をだまし取ったとして逮捕され、その捜査からマニュアルの作成者にたどり着いたとされています。
ここから分かるのは、この手口は一人の”天才詐欺師”の技ではなく、マニュアルとして共有され、誰でもまねできる形で広がってきたということです。「自分の相手は、そんな特別な悪人には見えない」——それこそが、この手口の怖さです。
2025年、ホストの「色恋営業」に規制——背景にある構図
りりちゃん事件も、今回の事件も、だまし取ったお金の行き先はホストクラブだったとされます。ホストへの高額な支払いのために、女性が別の男性からお金を引き出す——この構図は社会問題になり、2025年6月には改正風営法が施行され、恋愛感情につけ込んで高額な支払いをさせる「色恋営業」などが禁止されました。
ただし、規制ができても、男性の側が狙われるリスクがなくなったわけではありません。今回の事件が、それを示しています。
数字で見る「男性も狙われる」現実
「恋愛がらみの詐欺の被害者は女性が多い」と思われがちですが、ロマンス詐欺の統計を見ると、実態はちがいます。警察庁が2026年5月に公表した確定値によると、2025年(令和7年)のSNS型ロマンス詐欺は5,645件・被害額546.4億円。その内訳は次のとおりです。
| 被害者 | 件数 | 被害額 |
|---|---|---|
| 男性 | 3,633件 | 328.7億円 |
| 女性 | 2,012件 | 217.7億円 |
出典:警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(2026年5月22日)
件数も被害額も、男性が約6割を占めています。さらに、男性の被害を年代別に見ると——
| 年代 | 男性の被害件数 |
|---|---|
| 30代 | 430件 |
| 40代 | 729件 |
| 50代 | 1,100件(最多) |
| 60代 | 903件 |
| 70代 | 268件 |
※20代以下・80代以上は省略。出典は同上。
男性被害者の4人に3人(約75%)が40〜60代です。また被害者全体(男女合計)で見ると、最初の接触ツールはマッチングアプリが1,846件(32.7%)で最多、やり取りに使われた連絡ツールはLINEが93.8%でした。
「会えたから安心」は通用しない
警察庁の統計でいう「SNS型ロマンス詐欺」は、対面することなくやり取りを重ね、恋愛感情を抱かせてお金をだまし取るものと定義されています。つまり、今回のように実際に会って信用させる”頂き女子”型の被害は、この数字の外側にあるということです。統計に表れる被害だけでも、これだけの規模があります。「会えたから本物」とは、決して言い切れません。
反対に、会わずにやり取りだけでだます手口も、AIの登場で見抜きにくくなっています。そちらの見分け方はこちらにまとめました。
👉 AI時代のロマンス詐欺|40代が知っておきたい7つの注意サインと相談先
“頂き女子”型の手口 6つの共通点
りりちゃん事件と今回の事件の報道から、共通する手口を6つに整理しました。
① 中高年の男性を狙う
りりちゃん事件の被害者は50代の男性、今回の事件は60代の男性でした。マニュアルの中では、中高年の男性を「おぢ」と呼んでいたとされます。経済的に余裕があり、誠実で、少し寂しさを抱えている——そんな人ほど狙われやすいと考えられます。
② 実際に会って、信頼させる
海外の”なりすまし”型のロマンス詐欺と違い、実際に会って食事をし、関係を深めてからお金の話を切り出します。会っている事実が、何よりの「信用の証拠」になってしまいます。
③「貸して」ではなく「助けて」と言う
「お金を貸して」とストレートに頼むのではなく、「母が入院した」「父ががんで手術」「借金を返さないと大変なことになる」と、困っている状況を打ち明けます。男性の側から「力になるよ」と言い出すように仕向けるのが特徴です。家族の病気の話は、とりわけ断りにくいものです。
④ 少しずつ、何度も
今回の事件では、約3ヶ月の間に複数回振り込ませ、合計で1350万円になったと報じられています。一度で大金を求めるのではなく、「今回だけ」「あと少し」が積み重なっていきます。
⑤ 将来の約束とセット
りりちゃん事件では、「借金を返せば一緒に暮らせる」といった、二人の将来をにおわせる話とお金の話がセットになっていたとされます。「この人を助ければ、二人の未来がある」と思わせるのです。
⑥ 同時に何人も
今回の女は「300万円以上もらった人は4人、300万円以下は2桁いる」という趣旨の供述をしていると報じられています。あなただけが特別なのではなく、同じ話が複数の男性に向けられている可能性があるのです。
なぜ、断れなくなってしまうのか
だまされた男性を「お人よし」「考えが甘い」と笑うのは簡単です。でも、この手口は、誰の心にもある気持ちを巧みに突いてきます。
- 頼られるうれしさ——「自分を頼ってくれた」という気持ちは、年齢を重ねるほど心に響きます
- 関係が壊れる怖さ——断ったら、せっかくの関係が終わってしまうかもしれない
- 「会っているから本物」という安心——顔も声も知っている相手を、疑う理由が見つからない
- これまでの時間とお金——一度払うと、「ここでやめたら、今までの分がムダになる」と感じてしまう
- 恥ずかしくて相談できない——アプリで知り合った女性にお金を渡している、と人に言えない
特に最後の「相談できない」が、被害を大きくします。だからこそ、この記事を読んでいる今のうちに、”自分のルール”を決めておくことが大切です。
見抜くためのチェックリスト(男性版)
アプリで知り合った相手との間で、次のようなことが起きていないか確認してみてください。
- ☐ 知り合って間もないのに、家族の病気・手術・借金の話が出る
- ☐ 「貸して」とは言わないが、あなたが助けたくなるような話を何度もする
- ☐ お金を渡すと、しばらくして別の困りごとが出てくる
- ☐ 病院名や詳しい事情を聞くと、はぐらかす・機嫌が悪くなる
- ☐ 「返すから」「一緒に暮らすために」など、将来の話とお金の話がセットになっている
- ☐ 「誰にも言わないで」と口止めされる
- ☐ 振り込みや現金の受け渡しを急がせる
1つでも当てはまったら、いったん立ち止まりましょう。お金の話が出た時点で、それ以上は進まないのが一番安全です。
お金の話が出たときの「断り方」

本当に困っている人を見捨てるのは、つらいものです。でも、あなたがお金を出さなくても、本当に困っている人には頼れる先があります。たとえば医療費なら、自己負担に上限がある「高額療養費制度」があり、病院の相談窓口(医療ソーシャルワーカー)も相談に乗ってくれます。
断るときは、相手を責める必要はありません。たとえば、こんな伝え方があります。
本当に誠実な相手なら、こうした返事で関係が壊れることはありません。断ったとたんに連絡が途絶えたり、責めてきたりするなら、それが答えです。
「本当かどうか確かめよう」とするのも、おすすめしません。診断書の写真などは簡単に用意できてしまいます。確かめるより、そもそもお金を出さないと決めておく方が、ずっと確実です。
もし、もうお金を送ってしまったら
すでにお金を渡してしまった方へ。一人で抱え込まないでください。恥ずかしいことではありません。相手は、こうした手口に”慣れた”人たちかもしれません。実際、手口がマニュアルとして出回っていたこともあります。
- 証拠を残す——相手のプロフィール画面、LINEやメッセージのやり取り、振込の記録をスクリーンショットで保存(ブロックする前に)
- 振込先の金融機関に連絡する——口座が凍結されれば、残っているお金が返ってくる可能性があります
- 警察に相談する——警察相談専用電話「#9110」、または最寄りの警察署へ
- 専門の窓口に相談する——消費者ホットライン「188」、法テラス(0570-078374)、弁護士など
今回の事件でも、警視庁は余罪を調べています。声を上げる人がいるからこそ、事件は明るみに出ます。早く動くほど、取り戻せる可能性も、次の被害を防げる可能性も高くなります。
まとめ|あなたの優しさを、守るために
「いただきヨシコ」事件、そして「頂き女子りりちゃん」事件を振り返りながら、”頂き女子”型の手口を見てきました。
- 手口の入口は「貸して」ではなく「助けて」。家族の病気・手術・借金など、断りにくい話
- 実際に会っていても安心できない。会って信頼させるのが、この手口の特徴
- ロマンス詐欺の被害者は男性が約6割。男性の被害は50代が最多、40代も729件
- 手口はマニュアル化され、誰でもまねできる形で広がってきた
- 守るルールは1つ。知り合って間もない相手には、お金を出さない
- もし送ってしまったら、証拠を残して #9110・188 へ
人を助けたいと思う気持ちは、あなたの大切な長所です。その長所を、だれかに”いただかれる”ためではなく、本当に大切な人との未来のために使ってください。
マッチングアプリそのものが悪いわけではありません。本人確認や監視体制のしっかりしたアプリを選び、「お金の話が出たら終わり」という線を1本持っておけば、安全に出会いを探すことができます。
👉 40代におすすめのマッチングアプリ10選(本人確認・独身証明・監視体制の比較)
📚 あわせて読みたい
参考・出典(2026年10月確認)
- 日テレNEWS NNN「父がガンになり手術」などとウソ…男性から現金だましとったか(2026年10月1日)
- テレビ朝日系(ANN)「いただきヨシコ」36歳逮捕「父親がんに」「母親が病気」1350万円ロマンス詐欺か(2026年10月1日)
- FNNプライムオンライン「いただきヨシコ」36歳女、アプリで知り合った60代男性から1350万円だましとった疑い(2026年10月1日)
- 日本経済新聞「頂き女子りりちゃん」実刑確定へ 最高裁、上告を棄却(2025年1月)
- 日本経済新聞「頂き女子」、二審は懲役8年6月 名古屋高裁判決(2024年9月)
- Wikipedia「頂き女子りりちゃん事件」
- 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(2026年5月22日)
